MySQL Shell のパラレルテーブルインポートの実装が興味深かった
MySQL Shell のパラレルテーブルインポート
MySQL Shell 8.0.17 で導入された MySQL Shell パラレルテーブルインポートユーティリティ util.importTable() は、大規模なデータファイルの MySQL リレーショナルテーブルへの高速データインポートを提供します。 このユーティリティは、入力データファイルを分析してチャンクに配布し、パラレル接続を使用してチャンクをターゲット MySQL サーバーにアップロードします。 このユーティリティは、LOAD DATA ステートメントを使用した標準のシングルスレッドアップロードよりも数回高速に大規模データインポートを完了できます。 https://dev.mysql.com/doc/mysql-shell/8.0/ja/mysql-shell-utilities-parallel-table.html
MySQL Shell にはインポート機能があります。
このインポート機能は1つのファイルを小分けにして(チャンクにして)、並列でテーブルにインポートすることで、高速に動作します。内部の実装には上記の説明にあるとおり、LOAD DATA
ステートメントが利用されています。
mysqlsh> util.import_table("products.csv", {"dialect": "csv-unix", "table": "products"})'
どのように実装されているか
パラレル機能はどのように実装されているのでしょうか。ごく単純な実装として、インポート対象のファイルを分割したファイルをまず用意し、それを LOAD DATA
で並列にインポートする流れが思いつきます。
しかし、実際は、このような実装になっていません(もうちょっと賢い実装になってる)。
インポート中に流れているSQL
インポート中に実行されているSQLを見ると、同じ LOAD DATA
が並列に実行されていました。
LOAD DATA
で指定されているファイルは全て同じファイル (import_table
で指定したファイル名 /src/data/products.csv
) になっています。
mysql> SHOW FULL PROCESSLIST \G <snip> *************************** 4. row *************************** Id: 232 User: root Host: localhost db: onlinemall Command: Query Time: 5 State: executing Info: LOAD DATA LOCAL INFILE '/src/data/products.csv' INTO TABLE `onlinemall`.`products` FIELDS TERMINATED BY ',' ENCLOSED BY '\"' ESCAPED BY '\\' LINES STARTING BY '' TERMINATED BY '\n' *************************** 5. row *************************** Id: 233 User: root Host: localhost db: onlinemall Command: Query Time: 5 State: executing Info: LOAD DATA LOCAL INFILE '/src/data/products.csv' INTO TABLE `onlinemall`.`products` FIELDS TERMINATED BY ',' ENCLOSED BY '\"' ESCAPED BY '\\' LINES STARTING BY '' TERMINATED BY '\n' *************************** 6. row *************************** Id: 234 User: root Host: localhost db: onlinemall Command: Query Time: 5 State: executing Info: LOAD DATA LOCAL INFILE '/src/data/products.csv' INTO TABLE `onlinemall`.`products` FIELDS TERMINATED BY ',' ENCLOSED BY '\"' ESCAPED BY '\\' LINES STARTING BY '' TERMINATED BY '\n'
通常であれば、これはまったく意味のない行為です。重複エラーになるでしょうし、パフォーマンス面でもメリットはありません。
しかし、MySQL Shell は LOAD DATA
のプロトコルの仕様をうまく活用して、実際は高速なデータロードを実現しています。
LOAD DATA のフロー
LOAD DATA
のフローは特殊です。サーバは LOAD DATA
を受け取ると、クライアントにファイルの内容を送るようリクエストします。 INSERT
や UPDATE
と違って、クエリにデータが含まれていませんから、クライアントにファイルの中身を別途、送ってもらう必要があるわけです。
このあたりは、@tmtms さんの解説が詳しいです。
@tmtms さんのブログから図をお借りしました
パラレルテーブルインポートの実装
MySQL Shell は上記の仕様をうまく使って、該当のコネクションが担当する範囲(チャンク)のみをサーバに返しています。 つまり、各コネクションは同じファイルをサーバ側から読むようにリクエストされたにも関わらず、実際には異なる内容をレスポンスしています。
圧縮ファイルの扱いも同じ
このインポートユーティリティは圧縮されたファイルも扱えます。
mysqlsh> util.import_table("products.csv.gz", {"dialect": "csv-unix", "table": "products"})'
同様の流れで、解凍した内容をサーバに返すことで、本来は LOAD DATA
がサポートしていない、圧縮ファイルを LOAD DATA
できるように見せかけてます。 賢いですね〜。
-- 普通はエラーになる mysql> LOAD DATA LOCAL INFILE '/src/data/products.csv.gz' INTO TABLE `onlinemall`.`products` FIELDS TERMINATED BY ',' ENCLOSED BY '\"' ESCAPED BY '\\' LINES STARTING BY '' TERMINATED BY '\n'; ERROR 1300 (HY000): Invalid utf8mb4 character string: ''
-- MySQL Shell からだと実行できているように見える <snip> *************************** 4. row *************************** Id: 225 User: root Host: localhost db: onlinemall Command: Query Time: 117 State: executing Info: LOAD DATA LOCAL INFILE '/src/data/products.csv.gz' INTO TABLE `onlinemall`.`products` FIELDS TERMINATED BY ',' ENCLOSED BY '\"' ESCAPED BY '\\' LINES STARTING BY '' TERMINATED BY '\n' 4 rows in set (0.00 sec)
まとめ
LOAD DATA
のファイル名は飾り